手紙

『チャリング・クロス街84番地』(へーレン・ハンフ、中公文庫)

『チャリング・クロス街84番地』(へーレン・ハンフ、中公文庫)

担当・陽(読み:はる)が「俳句ポスト」の話をしていました。

ポストと言えば手紙、ということで『チャリグ・クロス84番地』(ヘレーン・ハンフ著、江藤淳訳、中公文庫、1984年発行)を思い出しました。

ニューヨークの作家へレーン・ハンフが、「サタデー・レビュー」誌に掲載された広告を見て、ロンドンのチャリング・クロス84番地にある古書店へ手紙(1949年10月5日付)を送ります。これをきっかけに、本を愛する人々が約20年以上にわたって往復書簡をやりとりする物語です。

ブックガイドとして本のことがよく分かるのはもちろん、1940年代から60年代のロンドンとニューヨークの様子も少なからず知ることができます。乾燥卵、ハムの缶詰、為替の情報といった具体的な情報を通して、過去と今で同じこと、違うことを発見できて楽しかったです。

一番良かったのは、へレーン・ハンフをはじめとした「本の虫」たちが、長い時間をかけた(ユーモア溢れる)やりとりの末に、色々あったものの良かったね、という充実した感覚を持つようになることでした。よくわからなくなりがちな自分や周りのことについて少しでも腑に落ちることができるのは、すごいことだなと思います。

何年も前に、物語の書店が見たくて「84番地」に行きましたが、お店はもうそこにはありませんでした。日当たりが良い場所なので、雨が多いロンドンでも、書店の棚では本が湿気りにくかったのではと思いましたが、実際はどうだったのでしょうか。

記:中の人

PS : 木星社ストアで古書の初版(講談社版)を販売中です。Sold Outとなりました。

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